前回のコラムでは、法定相続人の意味に関してお届けしましたが、今回はお約束通り、法定相続人の権利を保障する防波堤の話しをいたしましょう。
法定相続人であれば遺言書の内容に関わらず、遺産を受け取る事を可能にする法律の件です。
この「防波堤」ですが、法律用語では「遺留分」という言葉を使っています。
例えば、亡くなった方が奥様やお子様ではなく、法定相続人ではない知人に全財産を残すと遺言書を残したとします。(民法や税法では、亡くなって財産を残す方は被相続人、資産を受け取る遺族の方を相続人と呼ばれます。)
この場合、法定相続人の方が遺留分の申し立てをすれば、遺言書の内容に関わらず法定相続割合の50%*(*注:父母のみが相続人である場合は1/3のみの権利になります。)は受け取ることができます。これを「遺留分の減殺請求」と言います。
例を挙げると、一億円の財産を所有される方が亡くなり、奥様とお子様お一人がいるにも関わらず、他の女性に100%財産を残す内容の遺言書を遺したとします。この場合、奥様とお子様は法定相続割合の50%の半分である25%、つまり2,500万円ずつの遺産を受け取る権利があるのです。
残念ながら、もう半分の総額5,000万円に関してはあきらめるしかありませんが、少なくとも50%の権利は法律によって保障されているのです。
この遺留分ですが、ご注意いただきたいポイントもあります。
実は、法定相続人の中でもこの遺留分の権利が保障されているのは、配偶者、子、及び両親に限定されているので、もし、配偶者や子供、両親がなく、兄弟姉妹が法定相続人になるような場合でも、兄弟姉妹は遺留分の権利が保障されていないので注意が必要になります。
このように遺留分の権利は遺産を残す側から権利を侵害することは一切できませんが、法定相続人自らこの権利を放棄することはできます。これを法律用語で「遺留分の放棄」と言って、相続が発生する前(即ち、被相続人の方が亡くなる前)に家庭裁判所まで届けることによりこの権利を放棄することが可能になります。尚、一度受理されて権利を放棄することが決定した遺留分は後日取り戻すことはできません。